私の仕事上の買い物はというと、手芸、画材などを扱う 大型DIYショップが多く、主に新宿に密集しています。 人ごみを避けるために、通常は平日の午前中などに 済ませていますが、どの位前だったでしょうか… この日の買い物は、頭上の太陽の光が道路に反射し、 日傘も全く意味の無い、蒸し暑い日曜の午後でした。 この日いつもの渋滞気味の新宿通りは、歩行者天国になり、 多くの大道芸人による表現の場に変わっていました。 その中、ひと際多くの観衆を集めていた芸人に、 全く関心の無い私も少し足を止めてみました… 大きな輪の中には、全身黒色のジャージを着た青年がひとり 一輪車に乗ったまま、ジャグリングやナイフ、火を使った 危ない曲芸を披露していました。 技術だけでも感動要素になり、華麗な芸がひとつ終わる度に、 大きな拍手が沸き上がるのですが、 彼は、愚痴とも皮肉ともとれる小言で笑いも取ります… 「危ない芸をしないと、みんな感動してくれないんだよねぇ…」 こういった小言も、黒い服を着るのも、全て芸を惹き立たせる為で、 何度も練習をしている様子も、その服から時々のぞく筋肉で思える。 あっと言う間のショーが終わると、彼は手に持った鞄の口を広げて、 「お願いします!」という気持ちで空を見上げた… すると瞬く間に、鑑賞料を鞄に入れようと多くの人たちに囲まれ 彼がその輪に揉まれている様子は、私も感無量でした。 技術を越えて、魅力的な表現者に出会った喜びでした。 そしてその目の前に建つ「伊勢丹新宿本店」の6Fで 私も3週間程表現する場を頂きました。 その大道芸で、表現したそのものの背後には 表現者の人間性と歴史が感じられるものを 生み出す大切さを再確認しました…