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母からの手紙

母から送られてくる荷物の中には、 母が一生懸命に制作した服や、食品等が入っています。 時には、ティッシュボックス、ぞうきんなど、 荷物の隙間を埋める為だけの目的で入っているものもありますが、 皆実用的なものばかりです。 そして、いつも底には新聞が敷いてありますが、 その新聞には、私に読んで欲しいと思える内容の記事があります。 その内容は主に、健康に関する記事が多いのですが、 中には、故郷で活動している作家のインタビュー記事などもあります。 新聞はときどき、母からの「手紙」になるわけです。

服の作者

イメージ
私の母は3年ほど前からソーイング教室に通っています。 以前から実家へ戻る度に、新聞の折り込み広告を私に見せ、 「いつか時間が空くようになったらこのソーイング教室に 通いたい」と楽しそうに言っていました。ただその後も なかなか始めない母に私は、「楽しい事って直ぐに実行 しないと、逃げていってしまうのよ、特に楽しい事は」と。 母はそのうち(自ら狭くしていた)狭き門を潜り、 最初の1年は、私のもとには、教室で与えられた 課題である基本パターンの服が次々と届きました。 その後も休む事なく勢力的に制作していた母は、 進歩も早く、そのうちに私のデザインしたものを 理想以上に素敵な服に仕上げるようになりました。 既成の服と違い、母が作った服は、サイズや色、生地、すべてが満足のゆくもので、 私と母の合作であり、世界にたったひとつしかない服を着ている時は 少しの自信が加わり、背筋もピンとします。 今では母は、私や姉、孫たち皆に服を作り喜ばれていますが、ただ当初から、 私自身が残念だと感じていたのは、一生懸命作った母の証である作品には、 タグ(サイン)がないということ。 あるとき届いたジャンパースカートには、その前後が直ぐ分かるようにと、 後ろの首もとに「I sewed this」と明記されたタグが縫い付けてありました。 その意味を知らなかった母に、意味を知らせた時は、何とも言いようのない無情な 気持ちが込み上げました。母の温もりを感じながら、その名が無いのはあまりに寂しい。 ただ、今朝届いたカーディガンを見て嬉しかった…、 新しいタグには「ORIGINAL Y.Sasamoto」と刺繍してありました。

展示会にて

今年最後の仕事を終えた24日のクリスマスイブ、 田原桂一「光の彫刻」展へ行ってきました。 この日は、門から美術館までのアプローチにて 「光のインスタレーション」の最終日でもあり、 入場者もカップルが多い。 私は、小さいショルダーバックにワインを入れた小瓶と 小さなメモ用紙をもって、ひとり…堪能しました。 作品の主題は、「時間と光の交錯、光の痕跡」。 彼の作家活動は「写真」から出発していますが、 表現技法は、通常、印画紙を使用するところへ ガラスや石灰岩、アルミ、布などの上に 対象物を印画する表現方法をとっています。 主題である「光」は、多くの作家がモチーフないし テーマにしますが、彼独自の新しい表現と捉え方で展開し、 追求する信念を深く感じるものでした。 帰りは、この感動を共有したいと思い、私と同様に ひとりだけの鑑賞者に声を掛けたかったのですけど、 やはり、カップルばかり… 感動をひとりじめできた日でした。 田原桂一 公式ホームページ http://www.keiichi-tahara.com/ 東京都庭園美術館 公式ホームページ http://www.teien-art-museum.ne.jp/