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ある老人に想う

朝7時 冷たい空気と低い光の中 ジャズが流れる薄暗い喫茶店へ行く 間もなくして 背が高く姿勢のよい老人が入ってきた 70代後半か いや80代なのか 人目を気にしない白髪と服装に 美しく鋭い眼光が虚しい いつものコーヒーに いつものソファーで いつもの小説を まるで朗読するように 顔を上げて読み始める 私が小学生だったころの憧れの俳優だった人 もう舞台には出ないのか もう映画には出ないのか この人の今読んでいる本が これから主演する舞台の台本だったらいいのに…と ぼんやり眺めながら 家族と朝食をとる