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映画について No.2

「惑星ソラリス」監督/アンドレイ・タルコフスキー  ('72 ソ連 165mins.) 今日は、前回紹介した映像美とは少し違った、 映像詩人タルコフスキーの透明感のあるSF空間を紹介します。 私は元々、「科学や技術に支配された社会」設定には 少々飽きていて、むしろSFのS(サイエンス)は控えられて 1要素に過ぎなく、人間心理や精神重視の純文学傾向に 向かっている(70年代)SF近未来小説に興味がありました。 この映画も原作「ソラリスの陽のものに」を元にしていますが、 「科学的」な社会もあくまで、この映画の中では、 「一つの大規模な哲学」としてベースにあります。 ストーリーはある心理学者が未知の惑星ソラリスへ 派遣され、その中で起こる様々な現象から自分自身の 真の姿を発見させられるというもの。 きっと、この惑星は「鏡」の比喩であり、 自ら相手(鑑賞者)の姿態を映し出すことで その相手に対応・呼応しコミュニケーションを はかろうとする曖昧で濃密な空間だったのでしょう。 解せば、この惑星は「他者なくして存在しない」 ということではないでしょうか… 悩める作品がここにもありました。 「我々に必要なものは鏡さ、人間に意味があるのは人間さ」 「惑星ソラリス」 ............................................................................... アンドレイ・タルコフスキー監督 他作品 「鏡」('75 ソ連 106mins) 「ストーカー」('79 ソ連 163mins) 「ノスタルジア」('83 伊 126mins) 「サクリファイス」('86 仏/スウェーデン 149mins)

映画について No.1

今回から2回にわたって、印象的な映画を紹介します。 まず最初は… アレックス・プロヤス監督の 「スピリッツ・オブ・ジ・エア」('88/豪) その幻想的で美しく独創的な映像は、 果てしなく広がる荒野の中で、たった3人の登場人物 (亡き父親を祭った十字架の中で暮らす兄妹と 通りすがりの放浪者)だけで構成されています。 この冒険的で実験的な映像自体は、 SFXを駆使した特殊効果を使用しているのではなく、 亡き父親のお墓、兄妹の住む部屋の壁紙や不思議なインテリア、 登場人物の衣装デザインやメイク、さりげない音楽 1つ1つの要素が調和して、全体の映像を魅力的に作り上げています。 内容は、足の不自由な主人公が、長い間抱えている叶わぬ夢を 他人に託し、それを実現させるというシンプルな骨組み。 しかし、主張の中には、「自分自身が抱えている夢が、 たとえ第三者を通じて達成出来たとしても それは本人にとって「成功」したといえるのではないか…? という疑問符を投げ掛けています。 私にとって「いい作品」の基準とは、見る側を困惑させ 不思議な領域に導き、時には疑問を投げ掛け、 少々悩ましてくれる要素を持っているものかもしれません。 この映画に出会ったのは10年程前でしたが、 その時初めて、映画は脚本や監督で選ぶものだと知りました。 ............................................................................... アレックス・プロヤス監督 他作品 「クロウ/-飛翔伝説-」(`94/米 102mins.) 「ダーク・シティ」(`98/米 100mins.)