自然について~後編~

早速、先月のエッセイの続きをしたいと思います。
少し退屈でいて過激?な内容かもしれません、早く終わらせましょう。

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造形することに於いて、その中で既に完成された美を持つ自然を
材料として利用をするか否か、という問いについて。
私は使用する事に否定的なのですが、
とはいっても、100%使用しないというのは難しく、
ドライフラワーやプリザーブド、貝殻、植物から抽出された精油など
を使用している事を考えると、この信念にも矛盾があります。
使用を躊躇する根本的な要因としてはなんでしょう。
要因が分かれば、今後使用しなければならない時にも、
自覚し納得出来るというものです。

そこで、実際に生花を扱う技術書、
フラワーデザインテキストを手にとりました。

テキストには、「自然を表現する」「非自然を表現する」
「特殊構成理論」「一般構成理論」の順に攻略法が分かれている。
どの章も花そのものの性質を活かしながらいかに自分のデザインに
取り入れ表現するかという指導書になります。
造形する内容は殆ど芸術の領域内にある方法で、
あらゆる造形デザインに共通する基本的な技法のように感じます。
ある頁では、花の名前を色や形という単語に置き換えれば
まるで絵画やデザインのテキストのようです。

ところで、どのような絵具も、その色自体に、意味合いや美しさは
ありますが、形を起こすのは作家の手によるものです。
作家は、あるおのおのの目的で形を起こし、一定の空間を作り、
その中で主張をしますが、創作する上で、どの時点から関与するか、
という事で、主張性だけではなく、
作家の達成感と自信の度合いも大きく変わるように思えます。

もともと美しいものを要素として取り入れた場合は、
いかにその美しさを引き出すかという素材に対する意識が終始して
しまうのではと感じると、本来の創作で大切な作家の個性(所在)が
ぼやいでみえるのです。

時には、その美しさを追いかける模倣者になるものの…
私は、出来る限り「選ぶ」ではなく「創る」から始めたいと願うのです。

まだ理由はあります。
こちらの本の「非自然を表現する」という章。
非自然とは、自然的なものを可能なかぎり排除し「人為的な考え」が
表現され、その基本はジオメトリックの中で装飾的、非植生的、
構造的な造形要素を表現するというもの。
この主張性の無いジオメトリックな輪郭の中で、
いかに自然を活かすかが目的かと思います。

こちらは、よく豪華で素敵なレストランやホテルなどの玄関でも
出迎えてくれる幾何学的な演出です。
人間の体以上にスケールの大きい演出が多く、
その時節を感じさせる風情もありますから、
よく立ち止まり、眺めているお客様も多いでしょう。
あまり大きいスケールだと背景ととけ込み、輪郭が見えずらく
なりますが、遠くからその演出に近づいてみると
感じるのは、六角形や、長方形、楕円などといった自然界にはない
シルエットに、無理に自然を押し込まれたような印象を受けます。
それは私だけなのでしょうか。
規則的にグルグル廻ったり、交差したり、高い器から
真っ逆さまに垂れ下がったり…

花々と会話できるのなら聞いてみたい、
「あなた達は楽しんでいるの?、それとも遊ばれているの?」
私のまわりには幸い、活躍されている花の関係者がいますので、
この考えを否定していただけたら嬉しいのです。
このままだと、今迄通りの平行線、
出来れば利用したくないという気持ちに落ち着いてしまいます。

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