小学5年生へ贈る手紙

娘が通う小学校の行事の一つで、毎年5年生全員が、1年を掛けて取り組む一大プロジェクトがあります。 そのプロジェクトは、会社を立ち上げ、商品を製造・販売するのですが、現実に実質的利益も出すという、毎年1年限りの本気の事業です。最初の出資金は、「株主」という方に借り、最後に5%上乗せして返す流れのようです。

 今迄の流れでは、6月に地域の製造小売業の方や、企業の方を招き製造業のノウハウを学び、7月には、製造する商品を何にするか各クラスで案を出し、最終的にキャンドルが決定しました。夏休みには、各自でキャンドルの具体的なデザインやコンセプトを図案と共に考える宿題が出ました。娘は、地産地消を軸に、地域のハチミツ専門店の養蜂から生まれる未晒蜜蝋を仕入れ、原料(ゼロ)から商品開発をするというコラボレーション案を提出しました(が、結局こちらは落選)。 9月には、CEO(最高経営責任者)を校長に、会長(同学年担任の先生、以降「先生」)以外の社長、副社長、製造部長、販売部長、課長は児童が立候補し、皆の前で決意表明をして選出。10月から試作実験と平行して経営理念、会社のロゴ、具体的な商品の決定、12月から現在進行形で製造中という全体の流れです。


 私は、夏休みの宿題以来、学校でのその後の詳しい進行を聞かず、娘も言わない状態でいましたが、学校での製造が始まった先月半ば頃から、先生を伴いながらの製造においても、失敗が続いていること、社長や製造部長の児童が私自身のアドバイスを求めていることを娘から聞き、その時初めて見守っていた時間を後悔しました。


数日後に私は学校へ電話をし、先生にまず私が専門職であることを伝え、解決策をお伝えしました。そして今月半ばには、私が使用している道具類を抱え、放課後の学校へ伺いました。実際に児童が作業する家庭科室で、作業の仕方や現状の進行状況と失敗した状態を拝見しました。初めて制作する方にとっては、失敗の原因は、「技術の無さ」ではなく「想像のしづらさ」と言えます。材料の特質を知ることを大前提にし、作業場の室温と換気のタイミング、最低限必要な道具とその選び方、作業導線、作業に適した人数や効率的な役割分担など多岐にあり、実際に作業をするような身振り手振りでお伝えしました。 そしてこの日、私は、事前に全児童に配布して頂くためのアドバイスを1枚(A4)に纏め作成し、まず先生に解説しました。先生から、この内容は「児童たちが共感できる部分や、自分達の行っていることに自信が持てる内容」だと、ホッとした笑顔で感想を頂きました。


 そこには、キャンドルの作り方は一切載せていません。感性も才能も豊かで大きな可能性を秘めた子供達に、仕事をする上で最も大切で貴重だと感じていること綴らせて頂きました。それは「理念」を掲げ(商品と共に)広げ伝えることです。それを、本プロジェクトに直ぐに役立つ方法で具体的に示しました。翌日、この「手紙」は、全社員86名に配布され、これを元に進行されたようです。

2月下旬の販売日まで、残り一ヶ月になりましたが、悩むことがありましたらいつでも相談をして頂きたい願いです。皆の成功を祈っています。

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