私のカーテンづくり、実録

自邸は竣工から11年が経ち、生活の中で改善箇所が明確になってきました。特に、住み始めて直ぐ改良の必要を感じた要素が、ガラス窓から入る強烈な西日です。その問題の窓は3箇所。まず1階〜屋上まで続く高さ10m以上の窓から、正午以降に3,4時間のあいだ差し込む。この窓は、私が考案したファサードの一つで、家の中心に位置し、ここから各フロアと各部屋に繋がる。そのため、窓ガラスから伝わる外気は、時間差で家中に流れ広がる。

2箇所目は、リビング室の二面(幅3mと幅3.5m)の大ガラスからも西日が入る。眺めは良いものの、リビングに求める居心地や快適さに欠ける。リビングは、家族が食事や映画、会話、そして日々の何かを確認する集合場所で、同居していても1日に向き合う時間は案外短く、リビングは家族全員が揃う重要な場所です。加えて家人の日常は常に忙しく、この集合場所に集まってもまた直ぐに各部屋に解散。だからこそ一層の居心地の良さを求めたい。


3箇所目が、洗面室のガラス窓。この窓の正面向かいに丁度建物がないことも手伝い、西日が最も長時間差し込み冬は極寒、夏は灼熱になる。竣工時にミディアムの厚みのロールカーテンを取り付けているものの、目隠し程の用途でしかない。長時間いない洗面室ではあっても、この室内で使用する諸々の洗剤類や電化製品の表面の劣化が心配になる。窓辺の木材の面材の塗装は、直接陽を浴び続け酷く剥げてしまい、丁度1年前に自力で修繕をしている


カーテンに求める要素は、意匠性もさることながら実務能力(UVカットや室温の安定性、ミラー効果など)の根本的な能力も大切でした。竣工当時に選んだカーテンは、意匠性の面だけで判断し選び抜いた生地で、今もその魅力は健在で今後も我が家の象徴であり続けて欲しい。そのため、今回のカーテンづくりは、現存をそのまま生かした補整にし、裏生地を新たに重ねることで、機能性を追加することに。


長い反省の後は、幾つかのメーカーからサンプルを取り寄せました。意匠性、装飾性の高いカーテン生地を扱うメーカーは多いものの、機能性を優先したカーテン生地は製造の割合として少ない。絞ったメーカーは、拘らず日本大手メーカーのフジエテキスタイル、サンゲツ、川島織物セルコンの3社。幾つかのサンプルを請求する際は、事前に考えうる多くの質問をしました。「UVカット率の正確な数値(%)」「生地を二重にすることでUVカット率は、どうなるのか?」「生地の表裏を窓側や内側に変更することでの機能の変化について」「生地の向きを縦向きまたは横向きに変えることで、機能性に変化があるのか」「生地を洗濯したことによる機能性への影響と収縮率(%)は?」です。が、正確なご回答は、実際に試験をされた最初の質問項目だけで、その他は電話応対して下さった担当者のあくまで推測(感覚)でした。ものを作る上で、その素材を可能な限り正確に科学的、多角的に知ることは作り手の責任であり、その知識によって購入生地の大きさが変わり、縫製方法という知恵と工夫の内容にも影響する。毎回何かを生み出し新たな素材を取り寄せる際に感じることは、浅く僅かな試験で済ませて直ぐに製造発売する、ものづくりがファスト化している日本のメーカーの現状(市場)があるということ。哲学を持って機能性を備えた普遍的に親しまれる生地を生み出す方向になって欲しいと願いつつも、私の方も「もう作業を始めないと夏がきてしまう」ということで、ある一つの生地に決定した。フジエテキスタイルのライトシャワー(FA1202NW)です。


このライトシャワーは、太陽の採光はそのままにUVカット率71.8%+遮熱性があり、カーテンの開閉時にストレスがないように、ドレープ要素で大切にしたい軽やかさとしなやかな動きができる。また素材はポリエステル100%ですが麻のような荒く織られた透け感が、現存のカーテンの裏生地として適している。(しかしこの生地はミシン作業に入った途端に、寄れ易くほつれ易い性質を持つと判明)この生地を3m×4.5m購入し、無駄がないようにカット図面をイラストレーターで考え、間違えがないか幾度となく確認をした。サイズを間違えて小さく裁断すると、継ぎ足しで重ねた縫い目が逆光時にラインとして映り、裏生地の存在でも間接的に見えてしまう。次に机上に生地を歪みなく(縦糸と横糸が直角に交差しているかの確認を常にしながら)広げ、図面通りにマーキングをし裁断した。そして、ミシン縫製に入る段階で、ミシン糸は生地と同じポリエステル100%を使用。ミシンの糸調子は最も弱くし、縫い目の長さ(間隔)も仮縫いに近い荒さにして生地の引きつりを防止。1辺を縫うたびにスチームアイロンを掛けて僅かな「寄れ」を正し、繊細で薄い生地ならではの神経質さで仕上げた。


係りっきりではないものの仕上げまで2ヶ月を要し、既に真夏直前、これまで何回やり直したことでしょう。最終的には、生地を全て使い果たし、家中の4箇所のカーテンを補整した。カーテンは非常に大きな面積にも関わらず裏生地ゆえか、家人からは気付かれないままに、8月上旬、新たに加わったこのライトシャワーは、静かに脇役の任務を開始した。


2階から3階に向かう階段室。まだ補整前の一重のカーテンの状態。

補整後の二重のカーテン。階段室への採光は、一重と変わらず



リビングの二面の窓。夕方4時頃の二重にした状態の写真ですが、それでも明るい。










 


手前カーテンの裾は、ウエイトテープ入りの縫製でした。
3年程前、軽やかにしたくて、私が縫製を解き、中のテープを抜きました。


リビング西側の補整したカーテンの裾。外気を遮断する目的で、 カーテンは長い丈にし、ガラス製ティーライトホルダーで固定。
リビング西側の補整したカーテンの裾。
外気を遮断する目的で、丈を長くしガラス製ホルダーで固定。



自邸の中で、最も西日が長時間差し込む窓。
既にロールカーテンが付いているものの、効果が弱い。
カーテン生地を継ぎはぎして繋げ、更に2重に縫製。



よく換気をする洗面室窓のカーテンです。
裾にウエイトテープを入れ、
カーテンの動きを抑えます。
テープは重さ×長さ別に豊富な種類を選び購入可能。

窓側カーテンの裾に、ウエイトテープを2重に入れた状態。






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